【合格書類】代々木キャンパス/慶應大学法学部政治学科/FIT入試合格(7期 原)
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第34回は、Loohcs志塾代々木キャンプから慶應義塾大学法学部政治学科FIT入試に合格したLoohcs志塾7期生・原歩実さんの志望理由書です!
“We need to be more American than Americans.
And at the same time, we should be proud to be Mexicans.”
と私のメキシコ人の友人は言った。自らの命のために少しでも異質な存在になることを避け、メキシコ人でありながらも、母国への愛着を抑え、「アメリカ人よりもアメリカ人」らしく、米国に住み続ける定めであるという。私は、そんな彼らがいつの日か「祖国に住む」という選択を採れる社会を創りたい。
米国留学して間もない頃に、家族に会えない悲しみ、不安感を抱えていた私を最初に家族のように受け入れてくれたのは中南米移民の人々だった。遠いアジアの島国出身の、言語も通じない私に対してただただ笑顔で居場所を作ってくれた彼らが大好きだった。そんな彼らには私の想像を超えた壮絶な経験が付き纏う。メキシコ人の友人の母は、女手一つで子育てをする上で、治安が悪く、十分な稼ぎも得られないため、泣く泣くメキシコを捨て、2歳の息子と共に米国へと発った。彼女は、子どもを親のフリをして飛行機に乗せ米国まで連れて行くというビジネスを行っている人々に息子を預け、自分は着の身着のまま海を越え、山を越え、人目を忍んで国境を越えた。彼女は息子を空港で見つけるや否や、暴力やレイプなどによって傷つけられていないかを入念に確認したと言う。しかし、母子共に命さながら逃れて来た「自由の国」では就職の際に中南米特有の名前であるがゆえに差別を受けるなど、いつ何時も彼らのルーツが中南米というだけで不当に苦しめられてしまうのだ。実際に私は、街の至るところで、大人だけでなく子ども達までもが、中南米移民を除け者にしている現実に直面した。ありもしないことをでっち上げ、罪のない人を殺「人犯」,「強姦魔」などと彼らのことを知らず、知ろうともせず、レッテルを貼り付ける人々。中南米移民の肌の色、過酷な労働の様、みすぼらしい見た目から、”po ta to”と呼ぶ人々。私はこのような差別を目の当たりにしてきたのだ。中南米移民の人々が差別に苦しむ姿を見る度に激しい憤りと深い悲しみを覚えた。このように、中南米移民の彼らは、暴力や貧困の広がる母国から抜け出し、自由で平和な生活を求めてきた先でも、差別や貧困が待ち受け、「苦しみのない生活」には到底辿り着けないのだ。私は、日本人として、彼らの友人として、このような現状を見過ごすわけにはいかない。
そんな在米中南米移民を助け出す上で、まず彼らがわざわざ危険を冒してまで米国に行かざるを得ない状況を脱却することこそが、問題の根本的解決につながるだろう。確かに、アメリカにおけるスペイン語での中南米移民に対する相談サービスや教育機関での学習支援サポート等をはじめとした在米中南米移民に対する人道的な支援も極めて重要な意義を持つだろう。ただ私が着目したいのは、泣く泣く母国を出ていかなければならなかった人人の存在である。彼らに「愛する祖国」で住むという選択肢を保障することは、不正規移民を防ぐという意味に止まらず、彼らの自己決定の機会を拡大させる意味をも持つ。
そのためには中南米社会の健全化を図らなければいけない。特に、在米中南米移民の大半を占めるメキシコ人の母国は厳しい情勢の最中にある。メキシコの相対的貧困率はOECD諸国の中でも極めて高く20 %を上回り、10人に1人が1日2ドル以下で暮らしている。また、米国の大量かつ半永久的な麻薬の需要に頼った麻薬ビジネスが発達し、マフィア組織も強大化している。それが治安の悪化に拍車をかけ、貧困社会を抜け出せない。しかも、麻薬を規制しようと試みれば、麻薬戦争を引き起こすため、政府も為す術がない。
こうした問題が複雑に絡み合い、解決は困難を極めている。米国留学中に悲しい現状を目の当たりにした時から、そんな現状に対して何もできていない自分に憤りを覚える。だからこそ、私は貴塾で学びを深め、この難題に立ち向かいたい。
まず、この問題を学際的に考察する視座を身につけるために、一般教養科目に取り組む。さらに、中南米をより深く理解するために地域研究や比較政治、国際政治を通して、中南米に関する徹底的な見識を習得したい。その上で、粕谷教授の下で中南米地域における政治体制や貧困の構造についてを既存の政治理論を辿りながら解き明かせることは魅力的だ。さらに、将来「人のため」に動く際に相手の立場に立つことがとても重要だと考える私は、海外や地方から優秀な学生が多く集まる貴塾にて、「半学半教」の精神のもとで共に切磋琢磨し、多様な価値観を身につけていきたい。
私は、恵まれた環境に生まれ、質の高い教育を享受してきたからこそ、それを社会に還元したいという強い思いを抱いている。中南米の人々と共に彼らの未来に光を灯すその第一歩を貴塾から踏み出していきたい。
以上
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