渋谷本校GW講習にて「斎木道場」を開催しました
※本レポートは、当日運営サポートとして参加したシェルパ(講師)の視点でまとめられたものです。
ルークス志塾 × 斎木陽平が描く「民主主義と法学の実践知」
2025年5月3日、ルークス志塾にて特別講演会「斎木道場」が開催されました。ゲストとして登壇いただいたのは、ルークス志塾の創設者・塾長であり現職の東京都港区議会議員でもある斎木陽平です。彼は、政治舞台のリアルな民主主義と法学の接点を語り続けている稀有な知の実践者です。今回の講演では、「法学を楽しく学ぼう──民主主義とはなにか」という一見シンプルながら、深遠なテーマが掲げられました。
ルークス志塾 × 松下村塾:知と実践の連関を現代に
ルークス(Loohcs)志塾はその名称が示す通り、既存の「school(知を重んじる場)」を逆から読み、知を出発点としながらも「実践」へと重心を移した教育を志向しています。斎木塾長は義務教育の「学校」は知を育むものであるが、「実践」が不足していると訴えました。そこで斎木塾長が今から15年前に設立したのが本学「ルークス志塾」です。知と実践は分断されたものではなく、相互に補完しあい、相乗効果を生むものです。この哲学は、幕末の松下村塾が持っていた「知行合一」の精神にも通じます。
今回の講演は、まさにその思想の具現化でした。現役の政治家である斎木塾長を迎え、理論だけでは届かない社会の生々しさ、法学の現場性、そして民主主義の「現在」と「過去」を語っていただくことによって、知識が実践へと繋がる橋を、聴講生ひとりひとりが渡る機会となったのです。そして塾生一人一人が民主主義の「未来」を考える機会もありました。90分程度のドキュメンタリー動画を塾生、シェルパ、塾長全員で視聴したのちに、小論文の課題を塾長自ら問いを提示して、添削を加えて下さいました。そこで浮き彫りになったのは塾生の問題意識の具体性の無さと現実からの乖離でした。議員という立場から現場の声を直接聞いている塾長の言葉によって、生徒の問題意識に「リアルさ」が加わったのが今回の斎木道場から得られた実りの一つです。
「問い」をともに考える──法学的ジレンマという装置
講演は単なる講義形式ではなく、参加型の「対話」に近い形式で進行しました。特に印象的だったのは、斎木塾長が「法学的ジレンマ」を巧みに用いながら、聴講生に思考の深さを促していった点です。
たとえば、いまや都市部を中心に頻繁に現れる「NIMBY問題(Not In My Back Yard)」──つまり、社会全体には必要だが自分の近くには来てほしくない施設建設に関する議論などが取り上げられました。この問題は法と倫理、公共性と私益、行政と市民の関係など、現代民主主義が直面する複数の層を絡めて考える必要があるテーマです。斎木塾長はこうした事例を単に解説するのではなく、「あなたが議員だったらどうするか?」「裁判官だったら?」「近隣住民だったら?」と塾生に問いかけ、それぞれの立場からの応答を受け取って講義を進めていきました。
このような講義形式は、単に「正解」を与えるのではなく、「考え続ける力」「矛盾を扱う力」を養うことを目的としたルークス志塾の教育方針とも深く響き合っています。当事者意識を持って問題に取り組む姿勢を塾生は学びました。
民主主義を「実感」する場所として
斎木塾長が語ったのは、法律や制度の話にとどまりませんでした。民主主義は「制度」であると同時に「態度」でもある──日々の生活や他者との関係のなかで、いかに私たちは「対話」や「熟議」に参加できるのかという問題を、塾長は身をもって提起されていました。
特に若者に向けたメッセージとして、「無関心ではなく、未関与なだけだ。関与すれば、必ず世界の見え方が変わる」という趣旨の発言は、多くの聴講生の胸に強く響いたことでしょう。こうした言葉こそ、ルークス志塾が目指す「自己変容」と「社会変革」の核にあたる部分です。
「民主主義を、現場から考える」──そんな貴重な機会が、今後も続きます。政治や法学に詳しくなくても、問いを持ち、社会を変えたいという気持ちがあれば十分です。次回の「斎木道場」では、さらに多様なテーマと実践を交えた内容が予定されています。
知と実践が交差する場に、ぜひあなたもご参加ください!!