【合格書類】代々木キャンパス/慶應大学法学部政治学科/FIT入試合格(7期 大田)
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第24回は、Loohcs志塾代々木キャンプから慶應義塾大学法学部政治学科FIT入試に合格したLoohcs志塾7期生・大田晃さん(Aldergrove Community Secondary School)の志望理由書です!
2年間私が留学したカナダのトルドー政権の組閣には驚かされた。大臣の半数は女性であり、インド系や先住民、LGBTの当事者が大臣に任命されたのだ。代議制は時として多数派の専制に陥ってしまう。数のみを頼りして政策を推進するは成熟した民主主義社会の公共政策とは言えないと思う。少数派の意見も熟慮しながら、広く市民の合意形成を図り、政策に落とし込める高い次元のリーダーになるために、日本最高峰の貴学部で是非学びたい。
そんな強い思いを抱く原点は自身の体験にある。私は小学5年次に大脳動脈が徐々に閉塞していく脳の難病、ウィリス動脈輪閉塞症(別名「もやもや病」)に罹り、5年次、6年次の2回にわたり脳血管再建術を受けた。病気を告げられた時は、没頭してきたサッカーと中学受験を両立すべく全力投球していた最中であり、大きな挫折と試練を味わった。元来明るい性格の私ではあったが、手術の度に髪の毛を半分剃られ、50個程も抜鈎痕のある頭をニット帽で隠して登校した際は、思春期も相俟ってさすがに気持ちが滅入った。実は自分が病気と診断される3年前に弟が同じ難病を発症し、同様に脳外科手術を受けている。10万人に0.35人という稀な病気の兄弟発症は珍しく、遺伝的原因も否めないため、家族全員で遺伝子検査を受ける事となった。遺伝的要素があるならば自分たちの子供達も同じ難病にかかる可能性があることを考え、とても悲しく複雑な思いがする。
手術のお陰で元気に学校生活が送れていることはもやもや病患者としては珍しく、何よりも支えてくれた家族とこの国の社会保障制度に感謝しなければならない。しかし、昨今、難病法は「広く薄く」という考え方に基づいて改正され、56だった指定難病数が330まで拡大された。もちろんこの拡大によって救われた患者にとって法改正は歓迎されるべきことであり大きな前進でもある。けれども、2018年からは重症度分類という新たな制度が開始され、現在は不自由なく生活できている私は難病非認定となる可能性が高まっている。もやもや病は原因不明で進行性難治性疾患のため、再燃して脳梗塞など重体に陥るケースも多く、この改正はとても不安を掻き立てるものである。また、私たち難病患者のデータの集積や分析も不十分で、もし再発した時のことや、将来世代のことを思うと、現状の医療政策に強い問題意識を持つ。
そんな不安と問題意識から自らの置かれた状況を正確に把握して具体的問題点を探りたいという考えから、もやもや病の患者の会「もやの会」関東支部代表の高柳氏と日本の希少・難治性疾患分野のNGOとして活躍されているASrid代表の西村氏に話を伺った。ASridの西村氏によれば、アメリカでは企業や難病患者、医師、政府、地域社会など多分野の人が金銭面や技術面で協力し、官民連携体制が確立されているという。一方で、日本は難病に対する理解が広く行き届いていないため、「もやの会」のような患者団体は単独で活動しているのが現状だ。だから、難病法を始めとする医療制度が抱える問題を補完できる政策を模索する必要があると強く思う。
厳しい財政状況の中の限られた予算の中で、難病政策の拡充を訴えるのは、気が引ける部分もある。しかし、米国では政府にのみ依存するのではなく多様なステークホルダーが協働することで、政府にのみ負担が集中することを防いだりしている。日本にも日本なりのやり方で実現しうる政策の創意工夫はあるはずだ。それをまさに貴学部で深く学んでいきたい。そのためには、政治学・行政学の基礎から始め、公共政策立案のスペシャリストとなるべく多層的な学びが必要不可欠だ。
また、難病問題は市場に任せていても、その患者の少なさから、消費者として相手にされず問題の解決がなされない「市場の失敗」の典型例でもある。市場は万能ではないことを当事者として切実に痛感しているからこそ、公共政策の意義がよく分かる。当然のことながら、社会には多様な人々がいて、その中には、難病患者のように「少数派」であるがゆえに公共政策の救いの手を待ちわびている人が多くいると想像がつく。高校時代の問題意識は難病政策に注力していたが、貴学部に入学し、さらにその関心領域を広げ、様々な公共的な課題を考え、解決策を立案できるような人物に成長したい。現時点の将来像としては国家公務員や当事者の救済の最前線で働きつつ政策提言を行うNGO職員などを考えている。
そうした意味でも日本最多の科目数と教員数を誇る貴学科は理想的な学びの場だ。多様な公共課題を分析し、解決策を考える土台となる民主主義思想論、政治学、社会学などを多角的に学びたい。さらに、河野研究会に所属し、難病患者を含む、様々なマイノリティーの人々の権利が尊重される「成熟した市民社会」をいかに構築できるかについて深く探求したい。以上より私は貴学部を志望する。
以上
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